カレーに使う香辛料や飲酒前後で飲むと効果があると言われる「ウコン(ターメリック)」ですが、近年では健康への様々な効果が期待され、定期的にサプリメントなどとして摂取する人も増えてきました。
インド原産のウコンは南国の植物というイメージが強いですが、実は日本の広範囲で比較的簡単に栽培することが可能です。
我が家でも2016年からウコンの栽培を始め、年々収穫量を増やすことに成功しているので、今回はウコンの特徴や効能、栽培方法について詳しく解説したいと思います。
※記事の前半はウコンの基本情報をまとめているので、育て方のみ知りたい方は前半を飛ばしてお読みくださいね。
Contents
ウコンとはどんな植物?
- 和名:ウコン(鬱金) 別名:キゾメグサ
- 英名:Turmeric
- 学名:Curcuma longa
- 階級:ショウガ科ウコン属
- 分類:多年草
- 分布:沖縄県と鹿児島県の一部で自生
- 原産地:インド
- 花期:8~11月
- 形態:球根
- 特徴①:寒さに弱い
- 特徴②:プランターや鉢でも生育が可能
ウコンの原産国はインドで、現地で食べられているカレーの黄色い色はこのウコン(ターメリック)の色です。
意外なことに寒さと乾燥に弱い以外は比較的育てやすく、プランターなどでも育てることが可能です。花は1か月ほど咲き続けるので、観葉植物としてプランターで育てるのもいいでしょう。
主な用途は食用ですが、生薬や染料としても使われる、利用用途の幅広い植物です。
ウコンの成分と効能・効用
ウコンに含まれる成分で注目されているのが、「クルクミン」というポリフェノール類の成分と「精油成分」です。
ウコンは「ウコンの力」に代表されるように、肝機能の増進効果があると言われ、飲酒の前後に飲むと二日酔いになりにくいとされていますが、その一方で肝機能障害を持った人がサプリメントなどでウコンを摂取して死亡した例もあり、素人判断での過度なウコンの摂取はあまり推奨されていません。
【ウコンを飲まない方が良いとされている人】
- 妊娠中の人
- 肝疾患がある人(ウイルス性肝炎・肝硬変・慢性肝炎)
- 消化器疾患がある人(消化器潰瘍・尿路結石・胆のう炎・胆石)
- 自己免疫性疾患がある人
クルクミンは万能薬になるのではないかという期待から、世界中で様々な研究が行われていますが、現時点では期待を超えるほどの効果がわかっていないのが現状です。
2017年に「ウコンは効果が無い」というニュースが流れ、ウコンの効果を期待してサプリメントを摂取していた人たちが騒然となったのが記憶に新しいですが、実際は「クルクミンに対する研究結果が思わしくない」という物であって、ウコンの効果を否定するものではなかったことはあまり知られていません。
(参考:The Essential Medicinal Chemistry of Curcumin)
クルクミンはウコンに含まれる成分の一部であり、想定されていた効果(ガン予防やアルツハイマー予防)が見られなかっただけで、ウコンそのものの効果が否定された訳ではありません。
現在ウコンを摂取している方は、過度にがっかりすることなく継続されると良いでしょう。
ウコンの花言葉
乙女の香り/あなたの姿に酔いしれる
ウコンの種類は4種類
ウコンには、大きく分けて下記の4種類があります。
- 秋ウコン:一般的な「ターメリック」はこの秋ウコン。花は白い。
- 春ウコン:別名キョウオウ。春にピンク色の花を咲かせる。苦く生薬に使われる
- 白ウコン:別名ハナショウガ。見た目はウコンよりもショウガに近い。
- 紫ウコン:別名ガジュツ。夏に紫桃色の花を咲かせる。根茎は青紫色
上記の4つはいずれも同族別種ですので、同じようにウコンという名前が付いていても別の植物です。
もし一般的に「ウコン(ターメリック)」と言われるものを栽培したい場合は、秋ウコンの事を指すので間違えないようにしましょう!
ウコンの栽培方法と手順
ウコンの大まかな栽培の流れは下記の通りです。
- 種ウコンを植える(ポイント:芽の部分を上にして深さは5cm程度)
- しっかりと土をかぶせて水をたっぷりあげる(ポイント:乾燥に注意!)
- 植え付けから2か月後くらいに追肥をし、そのまた2か月後に追肥
- 定期的に畑を見ながら根茎が地上に露出していたら土をかける
- 地上の葉が枯れたら霜が降りてくる前に収穫する
ウコン栽培の注意点は、「乾燥」と「寒さ」という2つの弱点をいかにカバーするかという点です。
根茎が成長するとともに地上にウコンが露出してしまうと、乾燥してしまうので土寄せをしっかり行い、土の表面がからからに乾いてしまったら水をあげるというような基本的な事を怠らなければ大丈夫でしょう。
我が家はウコン栽培の北限を超えるほどの寒い地域ですが、無事ウコンが育って収穫まで至っているのは、マルチングを行うなどして土壌の保温と保湿に努めたことも一つの要因かもしれません。
もし寒冷地でウコン栽培を考えている方は、マルチを使う事も検討してみてください。
【関連記事】>>>マルチングの目的と効果を解説!|材料別のメリットとデメリットは?
※マルチングを行う場合は、あとから土寄せができないので、植え付けの時にやや深めに種ウコンを植え付けると良いでしょう。
ウコンの育て方と注意点【Q&A】
1.ウコンの植え付け時期はいつ?
種ウコンの植え付けは気温が十分高くなってから行うのが良いので、4月下旬~5月上旬に行います。
2.ウコンに適した土壌の作り方は?
ウコンは水はけの悪い土では育たないので、腐葉土や堆肥をしっかりと混ぜ込んだふかふかの土にしてあげると良く育ちます。
ふかふかにし過ぎると突風などによる倒伏の恐れ等があるので、腐葉土を混ぜ込む割合には注意が必要ですが、沖縄など台風の多い地域で多く栽培されており、倒伏には比較的強いという研究結果があるので、極端に軽い土でなければ良いでしょう。
台風の被害によって葉身先端の裂傷や損傷が全株に観察されたが,その後新らたな葉が展開されると同時に倒伏していた地上部は1ヵ月ほどで直立し,回復した。これらのことからすると,ウコンは比較的台風に強い作物と思われる。
– ウコンの特性と栽培技術に関する研究 赤嶺ら
3.ウコンの栽培が可能な地域はどこまで?
インド原産で寒さに弱いウコンは、沖縄や鹿児島の一部で自生している以外は、野生ではほとんど見ることができません。
一般的には宮城県の仙台がウコン栽培の北限と言われているようですが、私たちが栽培しているのはその仙台よりもさらに県北の「宮城県栗原市」です。
岩手県の一関市にほど近い我が家の畑でもウコンは十分に育ってくれているので、栽培の北限は仙台市よりももう少し北の岩手県南部くらいまでは可能であると考えられます。
温暖化の影響か、ウコンが生育可能なエリアは拡大していると考えていいでしょう。
4.ウコンの種イモを撒くときの間隔はどれくらい?
植え付けする種ウコンが複数ある場合は、20cm~30cmは間隔をあけて植えるようにしましょう。
5.ウコンを収穫する時のタイミングは?
ウコンは10月の半ばに差し掛かると地上部の葉が色づきます。
地域によって収穫時期は異なりますが、収穫の目安は地上の葉が枯れるタイミングです。
我が家のようにウコン栽培の北限にあたるような寒い地域では、葉が完全に枯れてしまう前に土に霜が降りてしまうことがあるので、気候を見ながら霜が降りる前に収穫をしてしまいます。
一方で、温暖な地域の場合は11月半ばになっても霜が降りないので、地上の葉が完全に枯れてしまう頃が収穫の目安となるでしょう。
6.ウコンに適した土壌の酸性度(pH)はどのくらい?
ショウガ科の作物は酸性土壌を好まないので、pHが6.5~7(弱酸性~中性)であると良いでしょう。
雨の多い日本の土壌は元々酸性に傾いていることが多いので、畑のpHが酸性であれば植え付けの2~3週間前に調整する必要があります(※土壌改良資材によっては、使用後すぐの植え付けに適さないものがあるので、先に土の状態をコントロールしておきます)
※植え付けを行う畑の酸性度がわからない場合は、下記の記事を参考にしてみて下さい。
【関連記事】>>>土壌の酸性度(ph)を測定する方法とおすすめのph測定器
酸性の土壌をアルカリ性に傾ける土壌改良資材には「苦土石灰」や「籾殻くん炭」がありますが、私は「籾殻くん炭」をおすすめします!
Q2で「ウコンはふかふかの土壌が好ましい」とお答えしましたが、籾殻くん炭は土壌をアルカリ性に傾けるだけでなく、土壌をふかふかにしたり、保温・断熱性を高める効果もあり、さらには(この後解説しますが)アブラムシなどの強害害虫を忌避する効果があります。
籾殻くん炭やその他の土壌改良資材については、下記関連記事をあわせてご覧ください。
7.ウコンにつきやすい害虫と病気の対処法は?
アブラムシ
ウコンにつきやすい害虫にアブラムシがいます。アブラムシは、単一生殖で増殖し、生まれてきた時すでにお腹に子を宿しているという特徴を持っていて、短期間で一気に増えてしまうのが厄介な点です。
ウイルス病も伝播するのでしっかりと駆除をしたいところですが、農薬にも耐性を持った種類も多くいるので、一度発生してしまうと大変です。
前述の通り、土壌改良資材の籾殻くん炭にアブラムシの忌避効果があるので、土壌に混ぜておくと予防になるでしょう。
アブラムシの詳しい生態と駆除方法については、下記の関連記事をご覧ください。
アルタナリア
ウコンはアルタナリアという糸状菌のカビによって起きる病気にかかることがあります。
発生すると葉が褐色でまだら模様に枯れていくことで発覚します。
一度発生してしまうと菌糸や胞子の形で越年伝染するため、発生地には栽培ができません。また、発生してしまったカブは全て乾燥後焼却処分をする必要があります。
防除法としては、緩効性の肥料をしっかりと追肥して、土壌の肥料切れを起こさないことで対策を取ることが可能です。
8.ウコンを収穫した後の保存方法と加工方法は?
ウコンは収穫してそのままでは使用法が限られてしまうので、粉末にして保存するのが一般的です。収穫したウコンを保存しやすい粉末にするまでの過程は以下の通りです。
1.ウコンを収穫後に水洗いをしてスライスする
収穫後よく洗って土を落としたら、スライサーで2~3mmの厚さにスライスします。
2.天日で干す
粉末にするために完全に乾燥させます。風が吹くと飛ばされてしまうので気をつけましょう。(我が家は何度か風でザルごと飛ばされて拾いに走りました)
3.ブレンダーで粉末にする
パリパリに乾いたウコンを粉末にします。我が家でウコンを粉末にするのに使っている機械はこちらです。
4.ふるいにかけて荒い繊維は取り除く
粉末状にした乾燥ウコンは、微妙に大きな繊維が残ることがあるのでふるいにかけて細かいものだけ残します。これで完成!
あとは密閉容器に入れて保存しましょう!
9.種イモの保存方法は?
収穫したウコンのうち、乾燥・粉末にしないものについては、次年度の種イモにすることができますが、寒さに弱いため保存方法には注意が必要です。
温暖な地域では水洗いをせずに地中深くに埋めておくことで越冬ができますが、寒い地域では段ボールにおがくずやバーミキュライトを入れて、完全密封せずに冷暗所において越冬させることで、次年度も使うことができます。
10.ウコンをプランターで育てる方法とは?
ウコンは地植えだけでなく、プランターで育てることも可能です。
注意点は「深さのあるプランターや鉢を用意すること」
プランターで栽培して食用に収穫することを考える場合は、根茎がしっかり育つように深さのあるものでなくては収穫する大きさまで育ってくれないので注意が必要です。鉢であれば8~9号サイズ、もしくは深型プランターであれば十分なサイズでしょう。
プランターで栽培する時の用土の配合は下記がおすすめです。
- 市販の培養土
- 赤玉土:腐葉土:籾殻くん炭(or 苦土石灰)=7:2.5:0.5
※腐葉土は虫が湧く可能性があるので、敷地内やベランダで栽培する場合は注意しましょう。
まとめ
今回は、ウコンの特徴と育て方について解説をいたしました。
生薬としての健康面での効果が期待されるウコンですが、実は意外と育てやすい作物であることがわかります。
プランターや鉢でも育てることができるので、是非ご自身の手で育ててみてはいかがでしょうか。
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