柿はビタミンCや食物繊維が豊富で「柿が赤くなれば医者が青くなる」ということわざがあるほど栄養価が高いことで知られていますが、干した柿の栄養価はどうなのでしょうか。
天日干しで数日間乾燥させることで旨味が凝縮される干し柿は、きっと栄養化も高いはず!
我が家では毎年100個以上の干し柿を作っては家族で食べているので、食べ過ぎによる影響も気になっていたのでこの機会に詳しく調べてみることにしました。
もともと医薬業界でマーケティングをしていた私にとって、食品成分や数値のリサーチは本職です。
干し柿の栄養価をしっかりと調べてわかりやすくまとめてみたいと思います。
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干し柿と合わせ柿(渋抜き柿)の栄養価の比較一覧
まず、干し柿の栄養価を調べる前に、干し柿や渋柿の栄養価を比較しているサイトを見ると、
「干し柿のβカロチンの量は生柿の3倍になる!」
とか書いているところがものすごく多いこと多いこと。
これ、間違いですからね!
私は元々マーケティングをしていたので、そういうミスリーディングさせるような数字の見せ方はすごく気になってしまいます。
そもそも「干す前の柿(渋抜き柿):136g」と「干し柿:37g」の栄養価を比較する時に、質量が約1/4になっているのに100gごとの栄養価を比較して「何倍!」と書くのは変ですよね?
わかりやすく言うと、元々の質量から考えて「100gあたり」っていうのは干す前の柿の1/3個と干し柿3つの栄養価を比較しているようなものなので、そりゃβカロチン3倍になりますよね。
実際の数値を見ると、柿1つ当たりのβカロチンは干し柿にすることで減ります。
おそらくそれぞれの栄養価を紹介している元データ(wikipediaとか)が100gあたりの数値で、それをそのまま載せてしまっているからこんなおかしなことになるんでしょうね。
これじゃ、干したことによって栄養価がどのように変わったかわからないので、下の表では干す前と干した後のそれぞれ柿1つ分の栄養価を比較しています。(上のイラストの左側の比較)
栄養価(1個分) | 渋抜き柿(136g) | 干し柿(37g) |
カロリー | 86kcal | 102kcal |
たんぱく質 | 0.68g | 0.56g |
脂質 | 0.14g | 0.63g |
炭水化物 | 22.98g | 26.38g |
ビタミンA | 34µg | 44.4µg |
ビタミンE | 0.27mg | 0.15mg |
ビタミンB1 | 0.03mg | 0.01mg |
ビタミンC | 74.8mg | 0.74mg |
ビタミンB6 | 0.07mg | 0.05mg |
葉酸 | 27.2µg | 12.95µg |
パントテン酸 | 0.37mg | 0.31mg |
ナトリウム | 1.36mg | 1.48mg |
カリウム | 272mg | 247.9mg |
マグネシウム | 8.16mg | 9.62mg |
マンガン | 0.82mg | 0.55mg |
βカロチン | 571µg | 518µg |
食物繊維 | 3.81g | 5.18g |
18:1 オレイン酸 | 20.4mg | 96.2mg |
18:2 n-6 リノール酸 | 2.72mg | 14.06mg |
18:3 n-3 α-リノレン酸 | 14.96mg | 70.3mg |
※数値はそれぞれ渋抜き柿・干し柿1つ分の栄養価です(100g単位ではありません)
生の柿に比べて干し柿はビタミンCが大幅に減少
干す前後での栄養価の変化を比べてみると、一番最初に目につくのは「ビタミンCがめちゃくちゃ減っていること」です。
皮をむいて干す過程でビタミンCが破壊されてしまうために、生の柿には豊富に含まれていたビタミンCが干し柿ではほとんどなくなってしまいます。
ビタミンAと食物繊維が増える
ビタミンCとは反対に、干すことで増えているものとしては「ビタミンA」と「食物繊維」が挙げられます。
特に干し柿の食物繊維は果物類の中でもダントツに多いのが特徴です。
必須脂肪酸が大幅に増える
干し柿にすることで脂質が大幅に上昇していますが、その中でも「オレイン酸・リノール酸・αリノレン酸」の必須脂肪酸が大幅に増えています。
これら必須脂肪酸は、コレステロールを下げたり血栓予防をして血液をサラサラにするなどの効果があり、食品からの摂取が推奨されています。
ただし、過剰症による弊害も少なくないので注意が必要ですよ。
干し柿のカロリーはどれくらい?食べる過ぎると太る!?
干し柿1つの栄養価(カロリー)は102kcalで、干す前に比べて若干増えています(86kcal→102kcal)。
102kcalを消費するのに必要な有酸素運動は、ウォーキング(39分)、ジョギング(23分)、水泳(15分)、階段上がり(13分)です。
干す前に比べて質量自体は1/4に減っているので、人によっては生の柿よりもたくさん食べてしまうかもしれませんが、カロリー自体は増えているので当然「食べ過ぎは太ります」。
干し柿の特筆すべき栄養と効能は?
柿の中で最も特筆すべき栄養素と言えば、ポリフェノールの一種である「カキタンニン(シブオール)」という柿の渋み成分です。
渋柿に含まれるカキタンニンは水溶性のため、口の中に入ると強烈な渋味を感じさせます。
しかし、「皮をむいて干す」という干し柿を作る工程の中で、柿が酸欠に陥ることでカキタンニンが不溶性に変質し苦みを感じなくなります。
※渋が何故抜けるのかについては、下記関連記事をご覧ください。
このカキタンニンは強烈な抗菌作用を持ち、ノロウイルスやインフルエンザウイルスなどを含む12種類以上のウイルスに対して抗ウイルス作用を認めたそうです。*¹
豊富な食物繊維とカキタンニンによる抗ウイルス作用からも、冒頭のことわざの通り医者いらずと呼ばれるのにふさわしい効能を持っていることがわかります。
まとめ
生の柿と比べた時の干し柿の栄養価は、「ビタミンA・食物繊維・必須脂肪酸などが増え、ビタミンCが極端に減る」という結果でした。
巷でスーパーフードのように取り上げられているのは、単純に数字の見方がわからない人が100g換算した時の栄養素を見て「〇倍」と言うように誇張している(もしくは間違った知識を鵜呑みにして拡散している)というのが正しい見方かなと思います。
もちろん干し柿の栄養価が高いことは間違っていないのですが、決して生の柿と比べて色々な栄養素が数倍に膨れ上がってるわけではないことに注意した方がいいでしょう。
身体に良いという情報だけを聞きかじって干し柿だけを大量に食べたりすると、糖質や脂質の過剰摂取によって体調に不具合が起こることもありえます。
「栄養価が高くておいしいおやつ」として、一日多くても1~2個程度に留める方が良いと思います。
下の記事では、我が家が毎年作っている中がトロトロの美味しい干し柿の作り方を公開していますのであわせてご覧ください。